中学生のころから、女の子同士がやたらめったら「かわいいー❤」「○○ちゃんのほうがかわいいー❤」と言い合うのが、大っ嫌いでした。

例えば誰かが髪型を変えたとして、明らかに前の方が似合ってるのに
「えっ、超いいよ!成功だよ!」
とか言ってると、
それって全然やさしくないよなー…っと隣で思ってしまう。
私は
「爽やかになったね」とか「夏らしいね」とか
少なくとも嘘ではないことを言います。

また、
顔の造作が美しい人は「きれい」「可愛い」と誉めますが、
造作が特別美しいわけじゃないんだけど雰囲気が可愛いとか、性格の良さがにじみ出てる顔だちの場合は、
「可愛らしい」「上品な顔立ち」「愛くるしい感じ」「優しい顔立ち」などなど
それぞれに合った誉めかたを探します。

そして、目上の人。たとえば教師だからといって無条件には尊敬したことはありません。
「この人は肩書きは先生だけど、つまらない人だな」と思えば、文句言われないだけのこと(勉強や諸々の活動)はやっていましたが尊敬の念や服従の姿勢は微塵も見せませんでした。
そのかわり、この人は好き、尊敬できると思えば、どこまでも信頼してなついていましたが (笑)

周りの大人の顔色はおそらく普通の子供より見ていたと思います。でも、だからっておべんちゃらを言ったり媚びたりはしない。
期待を先読みし、それに応えることで信頼を勝ち得ようとする少女でした。


要は、
とりあえずテキトーに相手を誉めてりゃ人間関係うまく行くだろう

という考えが嫌いで、(こちらは意識的)

偉い人には媚びてほめそやして、いい気分になってもらおう

という考えが毛頭無かったのです。(こちらは嫌いとかでなく、思い付きもしなかった)


ただし、目上の人に対して不遜な態度をとっていたとか、意気がって反抗してたとかそういうことではありません。礼節は尽くしていました。両親からしっかりしつけられていましたし、周りからの評価も「しっかりしてきちんとした子」だったと思います。(自分でいうのもおこがましいですが)


その価値観は大学生になってからも変わらず、
愛想はいいし誰とでも感じよく接しはするけど、社交辞令は苦手、女同士の訳のわからない誉めあいも苦手。
本当に素敵と思ったときに「素敵」と言い、好きと思ったときに「好き」と言いました。
それは先輩が相手でも、教授が相手でも変わりません。

いろんなコミュニティーで本音と建前を使い分けては上手に立ち回る友人を見て、器用だなぁとは思いましたが、真似したいとは不思議と思わず、 まぁ私はこれでいっか、くらいに考えていました。
幸い周囲の友人や先輩後輩にも恵まれ、「ゆりって、ほんとに真摯だよね」と私の性格をポジティブに捉えてくれる人が多かったので、人間関係の苦労はほぼ全く無いといっていいくらいの大学生活でした。


ところが、

就職するとちょっと事情が変わったのです。


社会に出て仕事をするということはつまり、気のあうあわないに拘わらず、色々な人とうまくやっていく必要があります。

新卒で入った会社は外資系だったこともあってか非常に風通しがよく、上司であっても肩書きではなく「○○さん」と呼ぶのがルールでした。
緊張しまくりながらも私なりに精一杯の敬語と礼儀正しさで上司・先輩と接していたのですが、
ここでも、マネージャーだろうが本部長だろうが「対・人」であることに変わりはないので、ごますりもおべんちゃらも一切言わず、ほめそやしもしない私。

「今年の新人は、落ち着いてるね~」と、マネージャー陣のなかで話題だったそうですww

出来ればずっとここで働きたかったくらい良い会社でしたが、生来の生真面目さに加えて新人ならではの気負い、体力不足、レジリエンスの低さ、業務の複雑さ、色々な要因が重なりあって体を壊し、退職を余儀なくされました。


次についた職は、大学教授の秘書です。
何のコネか愛人かとさんざん聞かれた就職でしたがww普通に履歴書を送って面接を受けたことをここに明記します!ww

仕事をしはじめて知ったのですが、こちらの教授、秘書の入れ替わりが非常に激しいので有名だそう。つまり、教授の要求レベルが高いのか、もしくは秘書が愛想をつかすのか…。
でももうせっかく見つけた仕事ですから、それはそれは必死にこなしました。
大学院生をを50人かかえ、巨大な額の研究費をあてがわれている研究室の教授でしたので、秘書の仕事は教授の個人的な業務にとどまらず研究室の活動全体に及びました。秘書、総務、財務、経理、庶務を全部やる感じですwあ、あとお問い合わせ窓口(英語可)…これが一番きつかったかも。
先輩も同僚もいない状況で、全く知らない仕事をよくまわしたもんだなぁと今でも思います。

秘書の入れ替わりが激しいのが、何に起因していたのかは結局いまだもって不明ですが、
慣れてくるにつれてわかったことがあります。

●機嫌の良し悪しの波が激しい
●京都の方だからか、本音と建前が非常にはっきりしている(つまり二枚舌)
●適当に人をおだてて面倒なことを押し付ける(笑)
●控えめなようで、プライドが高い(まあ当然ですが)
そしてご機嫌が悪ければ
秘書は一番にその割りを食う


最後の一点がつらいところです。
段々と私も、上司との関係や異常な業務量にストレスを覚えるようになってきました。
「仕事とはそんなもんだ」と頭ではわかっていても、あまりに理不尽なことを言われたり、大切な業務報告をスルーされたりすると、胃が痛くなりましたし、イライラを押さえきれなくなりました。


そんな最中、私の状況をとある知人の年配女性に話したところ、私の目をじっと見て
「貴女、ちゃんとその先生をおだてて、気持ちよく仕事ができるようにしてる??」
と聞かれたのです。

へ??おだてて気持ちよく??

いえ、全然…。

「あのね、貴女は本当に人柄が誠実で、相手の身分や立場によって態度を変えたりしない。もちろん礼儀正しいけど、偉い人だからって、媚びたり、おべんちゃらをいったりもしないで、対等な人間同士という前提で堂々と接するわよね?」

はい…。

「それはね、身近な人たちにとってはこれ以上なく信頼できる人柄だし、きちんと人間の本質を見られる人にはとても重宝がられるの。でもね、世の中そういうひとばっかりじゃない。むしろ、もっと薄っぺらい人が大半なの。そういう人たちは、お世辞とわかっていても誉められたいし、プライドをくすぐってほしいし、特に社会的身分が高い人は持ち上げられることに慣れてるから、それをされないとなんとなく不満なのよ。」


目からウロコでした。

私にとっては、「教授」は勿論偉い人ですが、自分がきちんと実直に仕事をこなせば必要十分な上司と部下に過ぎず、お世辞をいったり持ち上げたりする対象では全くなかったのです。


さらに彼女の話は続きます。

「魑魅魍魎、有象無象な人が入り乱れてる世の中で、貴女だけが全員にその誠実さと正直さでぶつかって、いちいち傷つくのは損でしょう?価値観を変えるんじゃないの。貴女の根本はそのままでいい。ただ、場面や相手に応じてうまく相手をいい気分にさせることは、それが心からの言葉でなくても貴女自身を守ることになるのよ。大人になるにつれて、少しずつ身につけなさい。」

これは本当に、コペルニクス的転回とでもいうべきアドバイスで、
思ってもいないお世辞や誉め言葉を口にすることが自分を守ることになる。
という発想が前述の通り全くなかった私には、軽い衝撃ですらありました。

でも、不思議とスッと、腑に落ちたのです。


そこから、ぎこちないながらも、アドバイスを実践してみました。
「先生、さすがのご指摘ですね」
「やっぱり人望が厚くていらっしゃいますね」
「それは先生のお人柄ですよ~!」
何かにつけて「素敵ですね」「さすがですね」
もしかしたら最初は不自然だったかも知れませんが(笑)、ためしてみると不思議なくらい手応えがあるのです。
「いやいやー、僕はそんなそんな」
と言いながら、満面の笑み!
すると、そのあとの打ち合わせもするすると進みます。

人を持ち上げるって、こんなにも簡単なことだったのか…。そして、こんなにも効果的だったのか!


それまでなんとなく、本音でないことを口にするのは「良くない」イメージでしたが、子供の頃ならまだしも、大人になって広い世界で多くの人と関わるには、ずるいことではなく必要な処世術だと割りきることができました。
もちろんプライベートな付き合いや、ちゃんと向き合いたい相手にはこれまで通りです。
ただ、ちょっとお世話になるクリニックの医者、ブライダル関係のスタッフさん、仕事で円滑に業務を進めたい相手などとの間では、適度な「潤滑油」が効果的で、自分を守ってくれるんだといまでは思えます。


日本では、「不器用さ」や「実直さ」は、正直な人間としてのイメージが強く、ポジティブに捉えられます。

それ自体は良いことです。

でも、「不器用さ」や「実直さ」は、行き過ぎるとときに自分自身を苦しめます。
繊細なひとであれば傷つき戸惑うでしょうし、
強情なひとであれば軋轢を起こすかもしれません。

自分自身や、自分にとって本当に大切な人を守るためにも、

言葉のワンクッション

を、上手に使って、ほんの少し器用に生きてみるのも良いかもしれません。
自分の幹はそのままに。
「いつもありがとうございます。」「さすがですね」とちょっと口にしてみる。

それはずるいことではありません。
人の心の動きを、ちょっと滑らかにするだけです。


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最近人との関わり方について考えるきっかけがあり、今日はこんなことについて書いてみました。考えてみた結果、根本はやはり私は変わっていないようです(笑)
どの人にも愛想は良いけど、心を開いたり本当に親しみや尊敬を感じるのはごく一部。

でも、ワンクッションは使ってますよ!病院とか歯医者とか美容院とか不動産屋さんとかクリーニング店なんかで!(笑)



ではではまた暑いので体調管理には気を付けてすごしましょうね~