アラサーライター吉原由梨の 「ようやく大人 まだまだ女」

フリーライター/コラムニスト、吉原由梨のブログです。 Webサイトを中心に執筆しています。 都内の大学法学部卒業後、 ITメーカーOL→ 研究機関秘書職→ 専業主婦→ フリーライター兼主婦 日々感じること、ふとしたことからの気づきを綴っています。恋愛と結婚を含む男女のパートナーシップ、人間関係、心身の健康、家庭と仕事、グルメや読書の話など。美味しいもの、マッサージ、ふなっしー大好き。 Twitter:@yuriyoshihara こちらもお気軽に。

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教訓

準々決勝、準決勝までは、代々木のオリンピックセンターで行われます。
全国から高校生がわさわさ集まってるわけですから、すごい人!!地元の県大会はもう上位陣みんな顔馴染みになっているので、このアウェイ感だけでも気圧されそうです。田舎から来てますし(笑)

でも、落ち着け、そんなことで気圧されちゃいけない。と自分に言い聞かせ、いつも通りの練習へ。

そうこうしているうちに東京にいるOBOGの先輩方が来てくれて、すごくホッとして気分がなごみました😊 あぁなんかいつもの部活みたい。
と緊張がほどけたのも束の間、本番が近づくと気持ち悪くなってきます。(私は極度の緊張症で、必ず吐き気におそわれます。たまに吐きます…。)
もう倒れるんじゃないかというところで、順番が来てマイクの前へ。
エントリーナンバー、作者名に作品名、学校名、氏名。
そこまで読むと不思議とすっと落ち着きます。
いつも通り読めた気がしました。

一方、別室で同じく本番を終えた友人は、なんだか冴えない表情。彼女は緊張なぞ全くしないのですが、どうもうまく行かなかった様子。ちょっと意外です。

この準々決勝から準決勝にあがるラインで、300人ほどの学生を60人にしぼります。

発表は翌日です。その夜は先輩方ふくめてみんなでバイト先の高田馬場のマクドナルドで大盛り上がりでした(笑)

そして翌朝、準決勝進出者発表です。
ドキドキしながら紙を見つめて…
あった!あった!私残った!

と思ったら、隣の友人の番号が無かった。実力的には十分残れたはずです。本当に前日よほど不調だったのでしょう。

なんとも言えない気分を私も味わいながら、
でも切り替えて、私は私の準決勝に集中せねばなりません。 顧問の先生が、気をきかせて彼女と二人でちょっと外出してくれました。(おそらく、このときに軽い雰囲気で慰めたんだと思います。友人も私の前では悲しいとか悔しいとか言いづらいでしょう。普段は激厳しいですが、暖かみのある先生です。)


そして私はまたしても本番が近くなると具合が悪くなり、吐きそうな気分をこらえながら会場へ。
真っ青になりながらマイクに向かい、前日と同じように読み始めます。

…悪くはありませんでした。
はっきりしたミスもなく悪くはないんですが、「いけた!」という手応えもなく、なんだか不完全燃焼感が。自分の呼吸と感性と集中力とがカチッと噛み合う感覚が無かったのです。でも、それも含めて実力です。

結果発表は翌日、NHKホールにて。
その日は先輩方と渋谷の山頭火にいきました(笑)


そして翌朝、生まれて初めてのNHKホール。
二人揃って寝坊したせいで(オイ)発表ギリギリに到着。
朗読部門の決勝進出者がスクリーンに写し出されます。

私の名前は、ありませんでした。

悔しかったです。残念でした。NHKホールの舞台は夢でした。
でもどこかで、ちょっと納得している自分がいます。昨日のあの感覚では、決勝に残れるほどの読みはできてなかっただろうと。

この体験は、私に大きな、非常に大きな教訓をくれました。
何か本気で手に入れたい、成し遂げたいと思ったら、最後の一瞬まで気を抜いてはいけない。手を緩めてはいけない。と。
結局私の詰めが甘かったのです。
この教訓は体験をもって強烈にわたしに刻まれ、その後の受験生活を乗り切るエネルギーになったと思っています。



地元に戻って、受験勉強1色の日々が始まります。部活も引退です。
結局夢の舞台にはたてませんでしたが、悔いはありませんでした。三年間やるだけやったし、教訓も得ました。

何より、
「言葉」や「文章」のもつニュアンスやオーラにとことん向き合ったことが貴重な財産になりました。
同じ単語でも平仮名かカタカナか漢字かでニュアンスは変わります。
感情や物の状態を形容するにも、漏れなくダブりなく二つの単語が使われている場合(たとえば「可憐で妖艶」など)は、そこをどうあわせてひとつの像として解釈し、どういう声の質感で表現するかによって、聞き手への伝わり方は変わるのです。

そんなことと日々向き合っていると、自然と自分が発する言葉にも気が向くようになりました。

もちろん24時間365日意識しているわけではありませんが、自分が言わんとすることに「しっくりくる」言葉を探す習慣が、いつの間にかついています。また、言葉のもつ雰囲気や質感にも、周りとくらべて敏感な方です。
ライターの仕事を始めてから自分の言葉で文章を書く機会が増えたので、部活動というのは意外なところで人生の役に立つんだなと実感しています。

もう一点、あらゆる種類の文章を読む訓練をしたことで、読んでリズムの良い文章とそうでない文章の違いを意識するようになりました。
代表的なのは、翻訳文です。あれは大抵朗読しづらいです。なぜなら著者の持つ本来のリズムではなく、翻訳の過程で仕方なくリズムが崩れてしまった文章を、違う言語で私たちが読むからです。(朗読の世界では、翻訳文はひとつの鬼門です)
そして、リズム良く朗読できる文章は、黙読していても心地よく、内容の理解もしやすいのです。
ですから、私は自分が原稿を書いたら、かならずぶつぶつと声に出して読んでみます。さすがに滑舌は気にしませんが(笑)、なんか心地悪いなと感じる部分は句読点を変えたり語句をけずったりと、音読を推敲の一助にしています。


芸は身を助ける、というほどのスキルではなくあくまでも高校生の部活動レベルですが、何か必死に取り組んだことは、意外な局面で活きます。そして重要なのは、必死に取り組んだのはもちろんのこと、楽しんでいたことだと思います。

こんなに長々と書くくらいですから(笑)、部活動3年間は、良いことも悪いことも含めて、私の大切な思い出です。


案外幼い頃や若い頃好きだったことに、自分の「得意」を見つける端緒が眠っているかもしれません。

みなさんも、少し思いを馳せてみてはいかがでしょうか。


それでは夏本番、良い週末を❤❤

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7/23は、NHK杯全国高校放送コンテストの決勝大会の日でした。

そして今年もまた行き損ねた私…( ̄□ ̄;)!!
毎年この7月下旬にNHKホールでやっていて、関係者以外も僅かですが席があるので、大学生の頃は聴きにいってたんです。
今年もフリーの立場をおおいに活用して、平日昼間にもかかわらず聴きに行くぞー!と思ってたのですが、
前夜の神崎恵さんのイベントで興奮しきっていたらしく完全に忘れてました

あぁ、日本一の朗読、聴きたかったなぁ。


というのも、私は実は高校3年間放送部に所属していました。
放送部だったというと、「お昼の放送?」と聞かれることが多いのですが、うちの高校はそうではなく、純粋に読む技術を磨く部活動です。
アナウンス部門と朗読部門にわかれていて、私が選んだ朗読部門では、随筆や小説、古典などの一部(3分くらいの原稿)を抜粋し、それを
正しく解釈し
正しいイントネーションで
良い発声 ・滑舌で
聴き手によく伝わるように
朗読する。

という、なんともマニアックな世界です。

毎日の部活は、発声練習と滑舌の練習から始まりました。

緩急などの表現力も大切なのですが、
ここで難しいのが
朗読は演劇ではないということ。
朗読者は、あくまで作品の世界観を聞き手に「伝える」だけであって、「演者」になってしまってはいけないんですね。
かといって、ロボットが読むようにただ淡々と読めばいいかというと、そうではない。作品の背景、筆者の当時の環境、作品の世界観、色々なことを理解した上で、たった三分の原稿でそれをどう表現するか。

そこのさじ加減が難しさであり、醍醐味でもあります。


そして、部員のなかでも各々カラーがあるというか得意分野があって、私は明るめの現代作品や古典であれば女性がかいた更級日記などが得意。別の部員は少し重めの作品、古典であれば軍記ものや男性がかいた土佐日記が得意。
などなど、声質やどんな雰囲気を醸し出すのが得意か、という部分まで影響してくるのが面白いところです。

説明すればするほど、マニアックですね(笑)

ですが全国で競技人口はそこそこ多く、
夏のNHK杯では地区大会の予選・決勝を勝ち抜き、県大会の予選・決勝を勝ち抜いて、ようやく各県から数人が全国大会に進めるという意外な難関です。
秋の新人戦は、3年生引退後の1,2年生が対象で、同じように地区大会、県大会があって、こちらは地方大会で終わりです。(母校の場合は九州大会)
他にも全国総合文化祭や、いろいろ挙げていくと各種大会はあるのですが、
主にこの2つの大会を目指して、放送部員たちは普段の練習に励んでいます。
(あ、でも十数年前の話ですからね…。いまは変わってるかもしれません)


なかでも、やはり高校球児にとって甲子園がハイライトであるように、放送部員にとっては夏のNHK杯がハイライトです。
私も、高3の夏にNHK杯全国大会に出場する。そして出来れば決勝10人に残ってNHKホールの舞台で朗読する!というのを目標に頑張っていました。

高1、高2の大会で少しずつ順位をあげていくことができて、2年の秋の新人戦では九州大会に進みました。なんと、運よくその年の開催地が沖縄(!)で、うちの部から女子四人がいったので、堂々と授業をさぼって軽い修学旅行です(笑)
大会以外の時間は、観光したり鉄板焼食べたり、ホテルのプールで泳いだり、夜中にカップ麺のソーキそば食べたり、
おいしい思いしたなぁ…。


あ、大会はもちろん真面目にやりましたよ!予選は無事勝ち抜いたのですが、決勝の課題が難しかった…。
朗読部門の決勝課題は、事前には知らされず当日の朝渡されて、予選の合間と決勝までの待ち時間に読み込んで準備をします。読みの基礎体力と、短時間で作品を掴む力、応用力を総合的に判断されるんですね。
私の力及ばず、入賞は出来ませんでした。


ここでの悔しさを3年の夏にぶつけようと待ちに待ったNHK杯、課題図書の中から私が選んだのは妹尾河童さんの『少年H』でした。
少年Hが、敗戦後、死のうとばかり思っていた日々から電車の轟音でふっと抜け出す、そんなシーンです。そのシーンを、前を向く力と希望を込めて明るく読もうと思いました。
正直いうと課題図書のなかにあまり私の得意そうな作品がなく消去法で決めたのですが(笑)、やると決めたからにはこの作品と向き合って駆け抜けるしかありません。
「一緒に全国に行こう」
原稿を見つめながら心に決めました。


予選は春から始まります。
3年ですし、県大会常連組は地区大会はあまり問題ではありません。一位か二位で通過。

次、県大会。ここでの結果で全国へ行けるかが決まります。たしか、私の年は上位5名が全国への切符を手に入れられるルールだった気がします。

しかしここで、アクシデント発生。顧問の先生が、学校行事で大会に来られなくなってしまったんです!聞いたときは顔面蒼白でした。
というのも、うちの放送部の強みは代々先輩から後輩へと受け継がれた技術もそうですが、顧問の指導力も大きかったのです。大会で審査員を務めるほどの人で、指導には結構ムラもあるのですが(笑)指摘が本質をついている。表現が抽象的すぎて、禅問答のように後から必死に意味を考えることもありましたが(笑)
その先生が当日来られないとなると、決勝対策がかなり厳しいのです…。
「誰か代役をたてて、顧問はこっちにゆずってくれ」と校長に直談判してみましたがw「無理よぉそんなの」とあっさり流されましたww

全国がかかった綾南戦で安西先生が来られなかったときの湘北選手の気持ち、よぉくわかります…。

結局状況は変えられず、決勝対策は電話越しにするというなんとも微妙な解決策をとることにして、当日を迎えました。

うちの部からは、3年生は私と友人の二人が出場しました。
予選無事通過。決勝課題は古典作品です。たしか、女性が夢を描写する話だったのですが、どこからどこまでが夢の話で、どこから現実なのかわからない(「」とかないから)状態で、それを解読するところから始めました。
そして顧問に課題をファックスし、電話越しに代わる代わる指導を受ける…(笑)
これで大丈夫かしらと思いつつも、全国に行くために5位までに絶対入るんだ!と必死に練習していざ本番。
一度か二度、つっかかってしまい「あ、ダメか…?」と思いましたが、実は朗読の世界では以外と大きな減点にはなりません。それを信じてやりきりました。

そして結果発表。

待ってる間はもう心臓飛び出そうでしたが、結果
私が3位、友人が1位!
二人とも全国です!

「やった~東京!!」と抱き合って喜びました。


NHK杯は、東京で夏休みに開催されます。夏期補講に缶詰にされる同級生達を尻目に、二泊三日東京の旅!
ちょうど受験勉強もなんとなく行き詰まっていたので、良い仕切り直しになるかもな、なんてこともぼんやり考えながら、いざ東京へ向かいます。


~続く

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